狂人日記

映画のある日常    【注意】映画のストーリー・結末などのネタバレを大量に含みます

ザ・マジックアワー



前作の「THE 有頂天ホテル」が大したことなかったので全く期待していなかったが、かえってそれがよかったのかもしれない。思ったよりよくまとまったコメディとしてそこそこ楽しめた。

楽屋オチのようにセリフでも言われていたが、セットであるのが見え見えな町並み、いかにもというギャングが存在して当たり前のように拳銃が出てくる物語、「カサブランカ」そのままの劇中映画など、オマージュという隠れ蓑で三谷幸喜が個人的趣味を押し通したであろう部分にはまあ百歩譲って目をつぶろう。まあそれはそれであくまで虚構である映画の一つの面白さではあるから。

しかしその上で陳腐なストーリーを136分の長尺映画に展開させるには相当な無理があるのだが、それを救ったのはひとえに佐藤浩市の壊れっぷりだろう。スタンドインとか小さな役しかつかない売れない役者という設定だが、映画への情熱やこだわりは人一倍あってそれ故に滑って売れない役者なんだなというのがだんだんわかってくるようになっている。だが初めてギャングのボスに会う場面という設定のところで見せたナイフを舐める怪演で見事この作品をものにしてしまったと言っていいだろう。または危ういところで三谷幸喜は救われたと言うべきか。

三谷幸喜だからというので人が集まってくるのかどうかは知らないが、小さな役にも三谷作品お馴染みの面々が使われていてそういうのを観る楽しみも尽きない。まあ全てはこの虚構に満ちた作品の世界観を盛り立てるためと思えば笑って許せるだろう。中でも「犬神家の一族」に三谷幸喜が出たお返しということだが、市川崑監督が自身のパロディみたいな監督で出演していたのには驚いた。これが市川崑監督の「遺作」ということになるのではないだろうか。

ただちょっと納得いかないのは、映画じゃないことに気が付いた佐藤浩市が、偶然ラッシュのように自分のフィルムが映画館で映されたくらいで全て許してしまった点と、本物の殺し屋が、あれだけ周囲をうろちょろしていたら事情もわかっているはずなのに突然怒って制裁にやって来た、という点だろうか。まあそれがなければ最後の「大仕掛け」が観られなくなるわけで、致し方なかったところなのだろうけど。

コメント

期待していたのとはちょっと違っていました。
面白かったのか、そうでもなかったのか・・・
それもわからない。

主役級の役者さんが多く出ていても、
その後いつ出るのかと思いきや結局その時だけで
もったいないような気がしました。

なんというか、私には解しがたい映画でした。
Kuruuさんはどう思われたのでしょう。

Re: ?

いかにも「映画のセット作りました」てな感じの街並みや室内、
そしていかにも一昔の映画に出てきそうなわかりやすい人々、
そんな人々が騙し騙されのサスペンスコメディを繰り広げ、
最後には「映画への愛」に収束されていく、簡単に言うと
そんな感じの映画でしたね。

いかにも三谷幸喜は映画が好きで、昔の映画をよく知っている
とでも言いたげですが、今回は彼が個人的趣味に走りすぎた
きらいがありますね。「カサブランカ」は私も名作だと思い
ますが、そのオマージュを延々繰り返されてもねえ。

確かに三谷幸喜は、今の日本で今風の(洋風の?)コメディを
撮ることのできる数少ない監督の一人だと思います。センスは
悪くない。しかし前作の「有頂天ホテル」はそれが空回りして
いたし、今回は趣味に走りすぎて普遍性を失っているような
気がします。

まあ監督業なんて好きなものを撮れなければやってられないんで
しょうが、もう少し客観性の強いコメディを撮ることができれば
私も三谷幸喜を素晴らしい監督だと思えると思います。

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